【国際共同製作フィルムメーカーズカンファレンス2022】エリック・ニアリ(プロデューサー)×半野喜弘(監督・プロデューサー)×リウ・フイ(プロデューサー)

Jan 21, 2023

2022.10.26実施

場所:有楽町 micro FOOD & IDEA MARKET

主催:経済産業省

運営:公益財団法人 ユニジャパン

     

国際共同製作フィルムメーカーズカンファレンス」開催にあたって


海外からのゲストが制限されていた東京国際映画祭ですが、3年ぶりに多くのゲストが来日し、作品の上映やイベントが行われました。コンペティションほか各部門で多くの国際共同製作作品が上映され、様々な映画人による対談が「TIFFスペシャルトークセッション」として行われました。その一環として、本カンファレンスでは東京国際映画祭公式出品作品の中から、中国、アメリカ、台湾など国際的な製作経験のあるプロデューサーおよび監督の方々にご登壇いただき、資金調達方法や制作プロセスの違いといったハードルをのりこえて国際共同製作を実現するに至った経緯や各国の映画製作の現状、今後の展望について語っていただきました。


本コラムはカンファレンスの採録、英語訳を掲載するものです。

                

カンファレンス登壇者

 

エリック・二アリ 

第35回東京国際映画祭 コンペティション部門『山女』プロデューサー

半野喜弘 

第35回東京国際映画祭 Nippon Cinema Now部門『彼方の閃光』監督・プロデューサー

リウ・フイ  

第35回東京国際映画祭 アジアの未来部門『へその緒』プロデューサー

モデレーター  市山尚三

東京国際映画祭 プログラミング・ディレクター

通訳 サミュエル周、樋口裕子

登壇者プロフィール

◇エリック・ニアリ Eric NYARI  (U.S.A)

米シネリック社代表取締役、シネリック・クリエイティブ社長。

劇映画、ドキュメンタリー、4K修復プロジェクトを多数企画・プロデュース。イランの巨匠・アミール・ナデリ監督、西島秀俊主演の話題作『CUT』(2012)。イタリア時代劇『Monte(山)』(2016)がヴェネチア国際映画祭で“監督・ばんざい!賞”を受賞。ヴェネチア国際映画祭でプレミア上映されたドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』(2017)は報知映画賞、文化庁映画賞を受賞。2020年にはNHKと国際共同製作した高校野球ドキュメンタリー『甲子園:フィールド・オブ・ドリームス』が米スポーツ局ESPNで放送され、日本で劇場公開。福永壮志監督の『AINU MOSIR』がトライベッカ映画祭のインターナショナル・ナラティブ・コンペティション部門にて“審査員特別賞”を受賞。

JP: https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP11
EN: https://2022.tiff-jp.net/en/lineup/film/3501CMP11
https://cineric.jp/about/

◇半野喜弘 HANNO Yoshihiro   (Japan)

作曲家/映画監督/脚本家。

台湾の巨匠ホウ・シャオシャン監督作品『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(1998)で海外メディアから「新たな映画音楽作家の発見」と評価をうけて以降、ジャ・ジャンクー、ユー・リクワイ等、現代アジアを代表する監督達と共同作業を重ね、カンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭などで高い評価を得ている。アジアン・フィルム・アワード作曲賞、台湾金馬奨音楽賞等にノミネート。最新作はフランスの名匠クリストフ・オノレ監督『Le lycéen』(ジュリエット・ビノシュ、ヴァンサン・ラコスト)。
映画監督としても『雨にゆれる女』(2016)でデビューし、東京国際映画祭アジアの未来部門に招待。監督第二作の台日合作『パラダイス・ネクスト』(主演:妻夫木聡・豊川悦司 音楽:坂本龍一)は2019年に台日で公開され、台湾金馬奨2019の美術賞にもノミネートされた。


JP: https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3505NCN03
EN: https://2022.tiff-jp.net/en/lineup/film/3505NCN03
http://www.yoshihirohanno.com/

◇リウ・フイ LIU Hui  (China)

プロデューサー、坏兔子影業(Bad Rabbit Pictures Ltd.)の創業者。

代表作に『飛蛾撲火』『失踪、発見』『私を雲まで連れて行って』『はじめての別れ』『風平浪静』などがある。『飛蛾撲火』は2018年ベルリン国際映画祭「テディベアアワード」のドキュメンタリー部門、2018年サンフランシスコFrameline国際映画祭メインコンペティションドキュメンタリー部門、第39回ダーバン国際映画祭ドキュメンタリー賞にノミネートされる。『失踪、発見』は第22回上海国際映画祭金爵奨メインコンペティション部門、第32回中国電影金鶏奨監督賞にノミネートされる。日本では中国映画祭「電影2019」のオープニング作品として上映される。『はじめての別れ』では第69回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門の最優秀作品賞、第31回東京国際映画祭アジアの未来部門最優秀作品賞を受賞する。『風平浪静』は第23回上海国際映画祭上海国際映画祭金爵奨メインコンペティション部門作品賞にノミネートされる。


JP: https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3502ASF04
EN: https://2022.tiff-jp.net/en/lineup/film/3502ASF04

中国インディペンデントの良作が生まれている背景

市山

第35回東京国際映画祭で上映された皆さんの作品についてお話しください。

リウ

映画の製作は、脚本の完成から撮影を経て皆さんに見て頂くまでに多くのプロセスがあり非常に長い時間がかかります。さまざまな困難をのりこえて夢を実現させるという大きな責務を背負っているのがプロデューサーという仕事だと思っています。


『へその緒』は、まず脚本を中国国内のいろいろな映画祭にもっていきました。「FIRST映画祭」(中国の若手映画人の作品を中心に上映される映画祭)、「北京国際映画祭」、「金鶏奨映画祭」(中国最大の映画賞表彰式と同時開催の主に中国、香港、マカオ、台湾の作品を中心とした映画祭)に参加し北京では1位となり、金鶏奨でも認められ、いずれも賞金が出ました。中国の(自ら資金調達を行う)インディペンデントの製作者と共同製作を行う際は、中国の映画祭の脚本コンペティションに参加して資金を得るというのがひとつの方法だと思います。次に資金集めが大きな仕事です。中国映画集団が参加してくれれば大きな展開が見込まれますが独立映画に特化して支援する会社もあります。また、上海の文化基金等、さまざまな資金を募れる環境があります。


私が過去に製作した作品を評価して資金提供してくれるような環境もありますので、(登壇者の)お2人も中国で映画を撮りたいと思ったならば私に声をかけていただければ一緒にできると期待しています。


『へその緒』はロケ地である内モンゴルで撮影し自然環境も厳しいところでしたが、自治区政府はじめ様々なところから撮影許可等の援助を得ることが非常に重要でした。プロデューサーが引き受けなければならない重要な仕事です。最近は独立系の作品を撮ることに対して地方政府からもこうした理解が進んできていると感じています。自然環境の変化にあわせ臨機応変にスタッフを組成するのも大変でした。


この作品はチャオ・スーシュエ監督が初めて監督する作品でしたので、周りのスタッフが重要でした。幸いにもベテランの優秀な方々を集めることができたことは非常に大きかったです。


今はこれからどう配給、宣伝していくかということで頭がいっぱいです。プロデューサーの役割は作品をどういい形で展開していけるかということに尽きるので、自分たちの理想を求め情熱を持って常にチャレンジをしていきたいと思っています。

市山

中国からインディペンデントの良作が生まれている背景がよくわかりました。いくつかの映画会社や財団などが若手を支援している環境があるということですね。

台湾の映画製作の環境は協力的

市山

続いて半野監督にお話をいただきます。半野監督はホウ・シャオシェン監督『フラワーズ・オブ・シャンハイ』の音楽をきっかけに、ジャ・ジャンクー監督をはじめ多くの作品で国際的な仕事をされてきて、監督もされています。妻夫木聡さん主演の『パラダイス・ネクスト』という大胆でおもしろい作品を日本・台湾で共同製作されました。どういった経緯だったのでしょうか?

半野

日本で映画会社発ではない挑戦的な企画を実現するのは難易度が高く、まず日本で資金集めをしようとしましたが脚本で厳しい反応だったので台湾へ持って行ったところ、台湾を舞台にして日本台湾双方で知名度のある俳優が主演、ということに興味をもってもらえ、資金の7割が台湾で集まりました。それらはほぼ企業からで、助成金としては日本の文化庁の国際共同製作助成金、台湾の機材の会社が参画してくれ高価な撮影機材を提供いただいたのも大きかったです。

市山

撮影や、制作現場の環境はどうでしたか?

半野

脚本の内容について台湾側のプロデューサーからの提案で議論したこともありましたが、台湾での撮影はロケに非常に協力的で、日本よりも人と人の繋がりで物事をすすめることができる環境だと感じました。

カメラマン以外のスタッフは台湾で集めました。以前フランスで撮影したこともありますが、国による環境としての働き方の問題というより、どんな国でも優秀な人、優秀ではない人、情熱のある人、ない人がいるということなのだと思います。

アメリカとの共同製作の可能性 出資の組み合わせ方

アメリカとの共同製作の可能性 出資の組み合わせ方

半野

今回の『彼方の閃光』は俳優もすべて日本人ですが、日米合作作品です。長崎の原爆、米軍基地の問題等を扱っていますが、メッセージとしては戦争という不幸なことがあると日本にとってアメリカは敵となり、同様にアメリカにとっては日本が敵になる、では敵とはなんなのかという問いなのですが、日米双方の視点があるのがフェアだと考え合作にしたいと考えました。

シカゴ国際映画祭に行った際に知り合った方々が資金協力に動いてくれて、アメリカから資金を得ました。映画祭というのは新しい出会いをつかむ場だと思います。日本人は(映画祭に)積極的に参加しない傾向がありますが世界標準から見ると業界関係者に対して「こういう作品を作りたい」という話ができる場であるわけで、映画祭を利用しない手はないでしょう。

市山

最後にニアリさんの話を伺います。プロダクションスタジオを経営しながらアミール・ナデリ監督、西島秀俊さん主演の『CUT』を手がけられ、以来多くの作品をプロデュースされています。これも国際共同製作でしたか?

ニアリ

今回の作品は日本とアメリカのハイブリットで資金を集めました。アメリカ側は日系アメリカ人の『CUT』はプロデュース2作目でしたが、映画祭でナデリ監督に出会い、人生が変わりました。配給会社から製作費を得ることは難しかったので日本映画に興味がある外国人を中心に40人ほどから個人資金の提供を受けました。


ヨーロッパは政府の助成金、日本は製作委員会という資金調達のシステムがあるがアメリカにはどちらもない。ただし古くから富裕層が芸術をサポートする文化があり、比較的簡単に映画は撮れます。日本のインディより環境がいい。

市山

日本からすると羨ましいですね。日本は製作委員会を組成することが多いわけですがいろいろな意見が上がり作品がいつの間にか変わっているとか、作品の尺も一定の制限がでてきますが、個人投資家であればそうならなくて済む。

半野

私の作品も同じく個人投資家2名が半分を出してくれました。

市山

『山女』はどのように資金調達しましたか。

ニアリ

ハイブリットです。日本では小さい製作委員会を組成し、文化庁の助成金、NHKの出資を得ました。アメリカではこれまで短編中心に行ってきた映画投資家から初めての長編作品にということで出資を得ました、投資リスクと引き換えに経験というベネフィットも得られるようにという考え方ですね。

監督の企画がNHKのテーマに合うものだったので先にTV版を撮影できたことで映画版は自由につくることができました。

市山

いろいろな出資があって1億を超える予算がつくれたのですね。

国際共同製作は人と人とのつながりから 国際映画祭の重要性

リウ

お2人の話を聞いてたいへん勉強になりました。国際共同製作の難しさを感じます。『へその緒』の監督の次回作については、フランスで撮る予定ですので参考になります。フランスの共同プロデューサーはこれから見つける予定です。

市山

半野さんはフランスに住んでおられましたね。それで半野さんに音楽をお願いした作品はCNC(注1)の助成金を得るのに基準のポイントをクリアできました。

半野

確かに20年間フランスに居住登録をして活動していましたので、CNCの助成金を得るためのポイントにカウントされる権利がありましたね。CNCは助成金額が大きい分、作品のレベルも高く競争率も高いのでしっかり基準をクリアしていなくてはならないわけです。

市山

フランス人でありながら台湾を拠点に編集を行っている方にも参画してもらいました。

リウ

私の作品でもお願いしたことがありますし、次の作品でも依頼しようと考えています。

半野

このように人と人のつながりから作品が生まれ参加してきたというのが殆どです。映画というのはプロジェクトとしては大きいが、実は人と人が繋がるというパーソナルなことが非常に大事で、映画祭という出会いの場に、これから(映画を)作りたい人は参加してほしいと思っています。

ニアリ

映画は長期間にわたる仕事なので、好きな人とでなければ難しい。私もこれまで映画祭で出会ってこの人と仕事したいということが多いので、本来の交流ができるように早く戻ってほしいです。

市山

私とご一緒いただく次回作についてもお話しください。

ニアリ

東京フィルメックス映画祭での企画募集に応募して感じたことですが、日本映画と他のアジア映画の製作費の差が大きく、アートよりの作品でも他国では1億円程度あるが、日本ではそれすら難しく残念です。しかしこの作品は製作委員会も組成し、文化庁の助成金が得られ、台湾からも個人投資家のほかTAICCA(注2)、台北市からの助成が得られている。アート作品ではありますが、希望のあるストーリーで哲学的にも面白いモノクロの時代劇なので、これまでにない規模で攻めた作品が実現できそうです。

質疑応答

日本では撮影現場の労働時間の問題があると言われていますが皆さんの作品はどうでしたか?

リウ

中国と他国では違うところがあるとは思いますが、少ない資金の中で限られた日数で撮影を終えるために労働時間が延びることはどうしてもあります。とくに天気や自然光を捉えるのは時間との戦いになります。芸術を追求するのも映画人の愛すべきところですが、一方でプロデューサーとして気をつけなければならない点です。

半野

撮影現場において何が心地よく何が辛いのかは個人によって違い、どこで線引きをするかが難しいところです。1つだけ確かなことは、脚本がよく演者が素晴らしく、プロデューサーや監督がすべての俳優スタッフに愛情をもって接していれば辛いレベルは限りなく下がるということです。決してスタッフやエキストラが映画の道具になるのではなく一緒につくっている個人だという認識を僕たちが持つことが大事なんじゃないでしょうか。

ニアリ

アメリカの現場と比べ、日本の現場は長時間労働などギリギリまでやっています。国際共同製作はいつもと違うパターンに変えるいい機会になると思います。半野さんの話のように低予算の場合皆が愛情をもって参加しいろいろな制限があるなかでベストな結果を出したいと思っているので難しいところですが、プロデューサーがバランスをとるのだと思います。

(注1)CNC  フランス国立映画映像センター(Le Centre national du cinéma et de l’image animée)フランスの国産映画およびオーディオビジュアルの包括的な支援を行う公的機関

(注2)TAICCA  台湾クリエイティブ‧コンテンツ‧エージェンシー(Taiwan Creative Content Agency)台湾の映画を含む文化コンテンツの産業化、国際化を促進する公的機関

 

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